過日紹介した消毒剤の後日談である。
職場の医務室に「ノロウイルスに御用心!」ってな調子でポスターが貼ってある。 「ノロウイルスには、逆性石鹸やアルコール等での消毒効果は弱く、塩素系消毒薬が有効である。」 「飲んで腹を壊したらどうすんねん!」と怒りを覚え、 「ノロウィルスにかかるよりは・・・」と納得した消毒剤であるが、 置いてあるのは、「逆性石鹸」の「エタノール」溶液ではないか。 どちらもノロウィルスには有効でないのに、ノロウィルス対策と称している。 気が付いているのは、成分を念入りに調べた自分ぐらいである。 みなさん、効果を疑わずに、ご使用中であるが、ノロちゃんには効果的ではないのである。 「まるで、プラセボだ」と思った。 「プラセボ」とは簡単に言えば、「偽薬」のことである。 片栗粉を丸めただけの錠剤でも「この薬は中国の秘薬で効果がある」と説明されて飲むと、 症状が改善したりするのである。 実際、このような「プラセボ効果」は新薬の臨床試験においては見過ごせないファクターになる。 薬効評価には、「治験薬(本当の薬)」と「偽薬」を用意して、患者に飲ませて薬の効果を見れば良いが、 患者は「治験薬」か「偽薬」か判らないので、「偽薬」を飲んだだけで直ってしまうこともある。 治験薬の投与群とプラセボの投与群を比較して、有意差があれば薬効ありと判断される。 最近ではダブルブラインドといって、医者にも「治験薬」と「偽薬」の区別がつかないようになっているらしい。 患者は「新薬」と信じて飲むのだから、医者の立場なら「偽薬」と知っていては処方できまい。 丸っきり効果のない「偽薬」を使うのではなく、ある程度効果のある「既存薬」を使う場合もあるようだ。 職場にも、プラセボに飛びつく人がいる。もちろん当人は効果があると信じて疑わない。 検診で中性脂肪の数値で「要注意」が出るというメンバー、聞けば毎晩ビールを飲むという。 「ビール止めたら、よろしいやん。」、「いやビールだけは止めれん。」 で始めはったのが、通販の「○○茶エキス」。 人のことは言えないが、ビールを飲みながら、というのが不純である。 傍から見ていると、服用前と変わらないのだが、当人は、体が軽くなったと言う。 「プラセボでしょう。」というと、「そんなことはない。今度の検診が楽しみだ。」という。 「しかも、効果が無かった場合には返金してくれるねん!」 検診の結果は、良くなかったのだが、本人は「何度か飲むのを忘れとったからなぁ」とちっとも疑っていない。 やがては、「○○茶エキス」を飲むことすら、すっかり忘れ、返金の申し込みもせずじまいである。 (きっと、納豆ダイエットも試してはったんやろな。) 消毒剤に話をもどすが、ノロちゃんには効果的でないのである。 医務室に文句を言ってやろうかと思ったが、医務室のお姉さんには自分がアル中であることは告白済みである。 「成分を確認したところ、効果的でないことが判りました。」 「何で、成分を確認する気になったの? まさか、飲もうなんて考えたんじゃないでしょうね。」 と言われかねない。ここは何も言わずに、ノロちゃん騒ぎが通り過ぎるのを待つことにした。
by enantio-excess
| 2007-01-23 00:09
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